「自分だけができてもダメ」──外注していた授業アンケートの集計を、Copilotで誰でも処理できる仕事にした話

こんにちは。「事務職員が変われば、北大は変わる」を実現したい、北海道大学DX業務推進室の高崎です。
北海道大学の事務DXでは、生成AIの業務活用を推進しています。2025年からスタートしたMicrosoft 365 Copilotの業務利用試行をきっかけに、さまざまな部署でそれぞれの使い方が生まれはじめました。
今回紹介する橋田さんは、毎学期ごとに業者へ外注していた授業アンケートの集計について、Copilotを活用した業務フローと引き継ぎマニュアルを整備し、「デジタルが得意ではない職員でも対応できる」仕組みをつくりあげました。
「コスト削減よりも、引き継げる形に残せた体験のほうが、自分には大きかった」という橋田さんに話を聞きました。
聞き手|DX業務推進室 佐久間
話し手|農学・食資源学事務部 橋田(事務DX「生成AIの業務活用促進」プロジェクトメンバー・ MX研修 第1期受講者)
(所属はインタビュー当時のもの)

Q1. どんな業務課題がありましたか?
昨年度まで授業アンケートの集計を毎学期ごとに外部業者へ委託していました。1回あたり約20万円、年間で40万円ほどです。長くそういう形でやってきたのですが、「なんとか自分たちでできないか」という提案があったのがきっかけです。
ただ、自前でやるとなったとき、「Excelやデジタルが得意な人に作ってもらおう」となると、今度はその人がいなくなったらできなくなってしまいます。外注をやめても、別の意味で属人化してしまうんですよね。
自分だけができるようになっても、「私がいなくなったらできません」では意味がない。作業に時間がかかりすぎず、ほかの担当者にも引き継ぎやすい方法にしたい。そこが最初のハードルでした。
Q2. なぜCopilotだったんでしょうか?
Power Queryなどを使えばExcelで処理できそうだなという感覚はありました。ただ、私もそんなに詳しくはないし、何より「どんな人でも引き継いでいける」状態にするとなると、操作説明も含めてかなり大変そうだな、と。
その点、Copilot Chatなら自然言語で指示できます。Power Queryの操作を一つずつ覚えてもらうより、ほかの担当者にも引き継ぎやすい。「誰でも引き継げる」という課題にフィットするツールだと感じました。
そして、回答データと過去の成果物をCopilot Chatに渡せば、集計結果を出力できるんじゃないかという直感もあって。実際にやってみたら大枠の集計は数分でできたので、「こちらのほうが取り組みやすそう」と思ったんです。

Q3. 具体的な取り組みの内容や工夫、試行錯誤したことはありましたか?
まず、業務フロー全体の方針として「職員全員が使えるツールで完結させる」ことを決めました。Copilot ChatとExcelの基本機能だけで処理できる形にしておけば、誰が引き継いでも対応できる、という考え方です。「完全自動化」ではなく、「Copilotと一緒に作業する」というイメージでした。
一番悩んだのは、マニュアルの中でCopilotとの向き合い方をどう伝えるかでした。「このプロンプトをコピペすればできます」で終わってしまうと、うまくいかなかったときに止まってしまいます。生成AIはマクロや関数と違い、常に安定した出力が得られるわけではありません。その前提をどう伝えるかは、かなり試行錯誤しました。
最終的には、作業用プロンプトを用意しつつ、「うまくいかないときはこう指示を加えてみてください」という対処法もセットにしました。プロンプトを渡して終わりではなく、その後の動き方を含めてガイドする設計です。
出力結果の確認についても、重要な項目を中心に内容や体裁をチェックし、必要に応じて修正する方法をマニュアル化しています。数値はExcelの機能を使って元データと照合する形をとることで、作業負荷を抑えながら必要な精度を担保できるように工夫しました。
なお、私は試行参加者としてMicrosoft 365 Copilotのライセンスを持っていたため、初期の業務フロー設計やマニュアル作成には自律型AIエージェントのCopilot Cowork※も活用しました。ただ、構築した業務フロー自体はBasicユーザーのCopilot Chatで完結できるので、引き継ぎ後も同じ形で使い続けられます。
※Copilot Cowork:複合的なタスクを自律的に処理するAIエージェント。本事例当時はFrontierプログラムとして試験提供中だったもの。

Q4. 取り組みの結果、コストや時間、作業量はどう変わりましたか?
年間約40万円かかっていた外注費を削減できました。
成果物の初期出力は数分程度で、確認や検証などを含めても2~3時間程度で作業できると思います。私が業務フロー構築やマニュアル作成に費やした初期コストを含めて、費用対効果としては十分に満足のいく結果になりました。
ただ、私にとって一番大きいのは、費用や時間の削減だけではありません。ほかの担当者も手順に沿って対応できる仕組みができた、ということが本質的な成果だと感じています。今後は、確認や検証も含めた内部の作業時間を見ながら、運用を改善していきたいと思います。
Q5. この経験を経て、自分の仕事や生成AIとの関わり方に変化はありましたか?
以前から思考整理や情報収集、文章作成にCopilotを使っていましたが、今回の経験を踏まえて、もっと本格的に実務に活用したいと思うようになりました。業務工程の中に上手く組み込むことで、集計のような実務でも、確認や検証を行いながら活用できると実感しました。
もうひとつ大きかったのは、Copilotの業務活用をほかの職員と共有することの大切さに気づいたことです。実際の業務でこうやって使えます、この作業が効率化できます、と具体的な説明をしたり、マニュアル化したりしたときに、興味を持ってくれる方が一気に増えたんです。「そんなことができるんだ」「もっと教えて」という反応もうれしかったです。
「生成AIは便利だから使ったほうがいいよ」と言うだけでは、具体的な業務活用をイメージするのは難しいというのをあらためて感じました。

自分だけが分かるやり方で、さっとやって終わらせることもできた。でも、引き継ぎやすい形にして、後任や周囲の職員にもCopilotを上手に活用する機会を共有することで、組織としての働き方がもっとよくなるかもしれない。それを感じられたのは、自分の中でも大きな変化でした。
今回は、コストを削減したことよりも、「誰にでも引き継げる形にして残せた」ということのほうが、今後に活きる経験だったのではないかと思っています。今後も、自分だけでなく周囲の人にもCopilotを使いたいと思ってもらえるように、ハードルを下げる工夫を続けていきたいと思っています。
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